”一人交換日記”

2019/9/7 デボラ・エリス『九時の月』

 

 

夜になり、瞼を閉じて何時間も、眠れず、身体中がカッカと火照って、
ふたりが名前を呼びあうのがずっと聞こえるような気がした。


空爆の音。何時でも何処でも監視者がいて、間違った答えをすれば連行され処刑される地。
読み終わったあと、この蝉の音しか聴こえない住宅街の方が白昼夢に思えた。

 

運命的に出会ったふたりの刹那の春、
引き裂かれ永遠の別れ、ことばもわからぬ異国の地に投げ出され
泥の家で夫になった元召使いの奴隷のように働くのみが生きる道(この物語の終わった時点では)、
彼女が生き延びたのは本当に奇跡のようだけれど、でもなにもかもを失ったこの世で
彼女はどうやって生きているのだろう、何を頼みに心の糧に生きていくのだろう、